1 相続人の不存在とは
民法は,相続人のあることが明らかでないときは,相続財産それ自体を法人とみなした上,相続財産管理人を選任し,相続財産の処理手続きを進めることとしています。
戸籍上相続人が存在しない場合がその典型例です。
また,戸籍上相続人となり得るものは存在するものの,全員が相続欠格,廃除を原因として相続資格を失っている場合も,相続人のあることが明らかでないときに当たります。
なお,戸籍上相続人は存在しないが,全財産を第三者に遺贈する遺言がある場合については,包括受遺者が相続人と同一の権利義務を有し,遺言者死亡の時から原則として遺言者の権利義務を一切承継することから,相続人のあることが明らかではないときには当たらないとした判例があります(最判平成9年9月12日民集51巻8号3887頁)。
2 処理手続きの概要
家庭裁判所は,相続財産管理人を選任し,これを公告します。
相続財産管理人は,相続債権者及び受遺者に対して請求申出の公告を行います。
請求申出期間の満了後,相続財産管理人は,相続債権者などに対し,弁済を行います。
請求申出期間が満了しても,なお相続人の存在が明らかではないならば,家庭裁判所は相続人捜索の公告を行います。
相続人捜索の公告期間の満了により,相続人の不存在が確定します。
相続人の不存在が確定すると,特別縁故者がいれば,特別縁故者が財産の分与を受け,なお残る財産がある場合は,残財産は国庫に帰属します。