3 相続財産管理人の選任
実際のところ,第三者に相続財産管理人を選任する必要が生じる場面としては,次のようなものを挙げることができます。
① 知人にお金を貸したが,その知人が返済することなく死亡した。
債権者が貸したお金を回収するためには,どのようにすればよいか。
② 隣地の建物が老朽化し,倒壊の恐れがある。
所有者はすでに死亡し,相続人も存在しない。
建物を取り壊してもらうためには,どうすればよいか。
③ 知人が亡くなったが,相続人がいなかったため,葬儀費用,祭祀法事費用を立替払いした。
立替金を支払ってもらうためには,どうすればよいか。
④ 不動産を時効取得したが,登記簿上の不動産の所有者が死亡し,相続人がいない。
時効取得を主張する者は,どのように移転登記手続きを行えばよいか。
これらの者は,相続財産管理人の選任申立権を有しているとされています。
そして,相続財産管理人の選任を申し立てた上で,相続財産との関係で法的主張を行うことができるということになります。
なお,葬儀費用や祭祀法事費用については,相続財産から支払ってよいかどうかが法的論点となっています。
葬儀費用については,社会的に相当と考えられる額については,相続財産から支払われるべきであるとする説が有力ですが,異説もあります。
そこで,実務では,相続財産から葬儀費用を支払う場合は,相続財産管理人が家庭裁判所に対し権限外行為許可の審判を申し立てるのが一般的になっています。
祭祀法事費用についても,権限外行為許可の審判を経た上で支払が行われることがあります。