4 特別縁故者
⑴ 特別縁故者とは
相続人の不存在が確定し,清算手続きを経て,なお相続財産が残った場合は,申立てにより特別縁故者に対して財産が分与されます。
被相続人が遺言書を作成していたとすれば,自分と特別の関係があった者に財産を取得させようと考えると思われるところ,このような被相続人の意思を実現するために,特別縁故者への財産分与の制度が設けられています。
⑵ 特別縁故者の範囲
民法の規定によれば,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者,その他被相続人と特別の縁故があった者が,特別縁故者に該当するとされています。
自然人ではなく,法人や権利能力なき社団も特別縁故者となり得るとされており,過去の審判例では,学校法人や宗教法人,老人ホームを特別縁故者と認めたものがあります。
ア 被相続人と生計を同じくしていた者
同一の世帯に属する者のことです。
内縁の配偶者や事実上の養子が典型例です。おじ・おばや,継親子を特別縁故者と認めた例もあります。
イ 被相続人の療養看護に努めた者
通常は,生計を同じくしていた者が療養看護に努めた者にも該当するため,療養看護に努めたという事情のみで特別縁故者と認められた審判例は,それほど多くはありません。
最近では,多数回にわたり,老人ホームや病院を訪ね,被相続人の療養看護や財産管理に尽くし,死後も葬儀や供養を行った被相続人のおばの孫及びその夫を,特別縁故者とした例があります(大阪高決平成20年10月24日家月61巻6号99頁)。
注意が必要なのは,対価を得て療養看護を行った場合です。
一般には,正当な対価を得て療養看護を行った者は,原則として特別縁故者には該当しないとされています。
しかし,対価としての報酬以上に献身的に療養看護に尽くしてきたのであれば,例外的に特別縁故者に該当するとされています(神戸家審昭和51年4月24日判時822号17頁)。