公証人の出張による遺言書作成
1 公正証書遺言の作成は、公証人の出張でも可能
遺言書を作成する方法として、主には、自筆によって作成する方法と公証人に作成してもらう方法があります。
公証人に公正証書遺言を作成してもらう場合、公証人に支払う費用が必要となるものの、遺言者は、自ら全文を自書しなくともよく、法律の専門家である公証人に法的に有効な遺言書を確実に作成してもらえるなど、さまざまなメリットがあります。
公正証書遺言を作成する際には、遺言者が公証役場まで出向いて作成するのが原則です。
しかし、遺言者がケガや病気などの理由で、公証役場に行くことが難しい場合もあるでしょう。
そのような場合には、公証人に遺言者がいる場所まで出張してもらい、出張先で遺言書を作成してもらうことができます。
公証人に出張してもらう方法で公正証書遺言を作成する場合でも、予め公証人に必要な書類を送っておき、遺言書の文案を作成しておいてもらうこと、作成の際には2人以上の証人が必要であることなど、公正証書を作成する流れは、公証役場で作成する場合と同じです。
2 出張を依頼できる公証人の制限
出張による公正証書の作成を依頼する場合、どの公証人にも依頼できるわけではありませんので、注意が必要です。
というのも、公証人は、法務省の地方支分部局である法務局または地方法務局に所属しているのですが、職務執行区域が決まっており、それぞれ所属する法務局または地方法務局の管轄地域外で職務をすることは、原則としてできないのです。
そのため、岐阜県内で、公証役場以外の場所で出張によって作成してもらう場合には、岐阜地方法務局に所属する公証人に依頼する必要があるのです。
岐阜県内には複数の公証役場があり、どの公証役場に所属する公証人であっても岐阜県内への出張には対応できるものの、基本的には、出張先に一番近い公証役場の公証人に依頼するのが適切でしょう。
3 出張にかかる費用
出張による公正証書の作成を依頼する場合には、公証役場で作成するよりも費用がかかってしまうというデメリットがありますので、注意してください。
遺言書の作成費用は、相続や遺贈の対象と財産の価格等によって算定されますが、出張による作成の場合には、基本手数料という額が1.5倍に加算されてしまいます。
これに加えて、日当として、1日2万円、4時間まで1万円の費用がかかります。
また、公証役場から出張先までの電車代やタクシー代などの旅費(実費)がかかります。
このように、出張による公正証書遺言の作成には費用がかかるため、公証役場での作成をすることが原則となっています。
どうしても出張が必要な場合に限って、公証人に出張による作成を依頼しましょう。
なお、出張をする際には、公証役場の事務員が、公証人の職務を補助するため同行することもあります。