遺言執行者の報告義務とはどのようなものですか?
1 遺言執行者の報告義務
遺言執行者には、相続人に対して、遺言執行の内容に関して報告する義務があります。
これは、民法の条文上では分かりにくいかもしれませんが、1012条3項で645条が準用されており、通常の委任契約における受任者と同様、遺言執行者は、相続人に対して、遺言執行の事務についての報告義務を負うことが定められています。
このような報告義務が課されている理由は、遺言執行の状況や経緯、結果についての報告義務を遺言執行者に課すことによって、その適正な事務処理を促進させるためとされています。
2 報告の内容と時期
遺言執行者には、相続財産の目録の作成義務と、相続人に対する交付義務があると定められています(民法1011条1項)。
遺言執行者の報告について、どのような内容の報告を、どのような時期にしなければならないかは、具体的な事例によるといえます。
事前に報告する義務があるかについては、遺言執行の事務を行う前に、常に事務の内容を報告しなければならないと考えることはできないという判断を示した裁判例があります。
あくまで、遺言執行者の報告義務は、適正な事務処理を促進させるために設けられていることを踏まえると、これを実現させるために必要な限りで報告義務を負うものと考えられます。
ここでは、遺言執行を迅速に行わなければならないという事情や、当該遺言執行事務によって特定の相続人に何らかの不利益が生じる可能性などを考慮して、それぞれの事情ごとに適切な内容の報告を、適切な時期に行うことになります。
3 報告の相手
遺言執行の報告の相手は、相続人や受贈者です。
基本的には、戸籍の記載に従って、相続人であると考えられる相続人には報告をする必要がありますし、真の相続人ではない可能性があるというだけで報告の義務がなくなるわけではないと考えられています。
他の相続人が特定の相続人に報告することに反対していたとしても、当該相続人に報告する義務がなくなるわけでもありません。
遺留分権利者ではない相続人であり、その相続人が相続する財産がなかったという場合も、その相続人に報告する義務がなくなるわけでもないと考えられています。
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