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死後事務委任契約について

  • 文責:所長 弁護士 古田裕佳
  • 最終更新日:2023年8月23日

1 どのような契約か

死後事務委任契約は、委任者が受任者に自己の死後の事務を生前に依頼する契約です

身寄りのない方や親族と疎遠である方、配偶者がいてもその配偶者が高齢のために十分に死後事務を行うことができないという方には、自らが亡くなった後にたくさんの死後事務が残されることに不安があると思います。

また、葬儀の方法や知人への連絡など、ご自身が亡くなった後にご自身の想いに従って死後事務を行ってほしいと考えることもあるでしょう。

そういった場合に、生前に、自らの死後事務を特定の者に委託する契約が死後事務委任契約です。

2 どのような死後事務があるか

死後事務の内容は明確に定義されているわけではありませんし、多岐にわたります

主な内容としては、亡くなったことを親族や知人に通知すること、葬儀や火葬、埋葬の実施、埋葬後のお墓の管理、賃貸住居の明渡し、医療費や施設利用料の支払い、遺品の処分、自治体への各種届出などがあります。

ただし、どのような死後事務でも委任できるわけではありません

本来遺言で行うべき内容については、遺言によって行う必要があると考えられるため、注意が必要です。

また、例えば、死亡保険金の受取りなどは、受取人となっている者が行うべき事務であって、受取人からの委任を受けなければ受任者は事務を行うことはできないと考えられます。

このように「死後事務」と考えられる事項のすべてを委任できるわけではありません。

社会的には単身世帯が増加していますし、自己決定権が尊重される中で、自らの死後のことについても決めておきたいという方は増えているため、死後事務委任契約のニーズは高まっているといえます。

3 どのように契約を行えばよいのか

まずは、どのような死後事務を委任したいのかを決める必要がありますが、一般の方は、そもそもどのような死後事務があるのかをご存知ないケースがほとんどです。

そのため、専門家と相談しながら、どのような死後事務があるのかを把握した上で、自分がどのような死後事務を依頼するのかを明確にする必要があります

葬儀については、どの葬儀社で行うのか、どの程度の規模で行うのか、どの方式で、どのお寺に依頼するのかなどを決めておく必要があります。

埋葬方法については、どのお寺に埋葬をするのかや、永代供養にするのであればその旨などを決めておく必要があります。

亡くなったことを知人や親族に連絡するのであれば、あらかじめ連絡する知人や親族の範囲と連絡方法を決めた上で、受任者に知らせておく必要があります。

葬儀や埋葬の方法については、宗派やお寺によっては必ずしも委任した内容で行うことができないというおそれもあるため、受任者は、あらかじめ委任者が希望する方法での葬儀や埋葬を行うことが可能であるかを調査することも必要です。

これらの細かな点まで詰めて決めておく必要がある一方、万一、この方法を採ることができなかった場合には、どのように対処するのかについても決めておく必要があります。

また、契約をした後も、事務処理までには長期間が経過するケースも多いことから、事情の変化があった場合には契約内容を見直すことも重要です。

どのような事態にも対応できるような契約を行うためには、専門的な知識とノウハウが要求されますので、死後事務委任契約を行う場合には、そのような知識とノウハウを持った専門家と契約することが重要です。

実際に契約書を作成する場合には、円滑な事後事務の遂行のために、公正証書によって作成するか、少なくとも、委任者の実印を押印した契約書とともに、印鑑証明書を交付することが必要であるとされています。

4 死後事務委任契約の費用はどのようなものか

通常、専門家へ依頼する場合には死後事務委任契約の報酬が必要となります。

報酬額がいくらになるのかは、死後事務の内容によると考えられます。

死後事務については、委任者が亡くなってからすぐに対応する必要があることから、この費用に充てる目的で預り金を預託しておく必要があります。

また、死後事務委任契約を公正証書で作成する場合には、公正証書を作成する費用も必要です。

実際の費用や預託金がいくらになるのかは、受任者と相談をして、その契約内容として決めることになります。

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