遺産分割協議
遺産分割で気を付けること
1 相続人調査や遺産調査をしっかり行う
相続人調査をしっかり行わないと、せっかく成立した遺産分割協議が無効になる場合があります。
実際、相続人調査をしっかり行わなかった結果、相続人の1人の同意がないにも関わらず、遺産分割協議書が作成されてしまい、結果的に、その遺産分割協議書が無効になった事例もあります。
また、遺産調査をしっかり行わないと、不利な内容で遺産分割をしてしまう場合や、後々、遺産が新たに出てきたことによって、当事者間でトラブルになってしまう場合もあります。
実際、遺産がほとんどないと思い、遺産を受け取らないとする遺産分割協議書に署名・押印をしたところ、後々、遺産が出てきたが、すでに遺産分割協議書に署名・押印している以上、やり直しができなくなったという事例も存在します。
このように、遺産分割を行ううえでは、まず、相続人調査や遺産調査をしっかり行っていくことが大切になります。
2 遺産分割協議書の作成を専門家に依頼する
また、遺産分割協議書の書き方次第では、後々、相続人間でトラブルになってしまう場合や、遺産分割協議書を作り直さなければならなくなる場合もあります。
たとえば、遺産分割協議書に記載されている遺産に漏れがあった場合、漏れた遺産に関して、改めて遺産分割協議書を作成する必要があります。
また、不動産の名義変更を行う際は、遺産分割協議書を法務局に提出する必要がありますが、遺産分割協議書の文言が不正確な場合や誤字があると、名義変更自体ができなくなってしまう場合もあります。
さらに、遺産分割においては、誰が、どの財産を取得するかによっても相続税が変わってくる場合もあります。
このように、遺産分割協議書の書き方一つをとっても、注意点がありますので、遺産分割協議書を作成される場合は、専門家にご依頼されることをおすすめします。
3 相続税の申告などの期限にご注意を
遺産の額が一定基準を超える場合、相続税がかかる場合があります。
相続税の申告期限は10か月以内のため、遺言書がない場合は、10か月以内に遺産分割協議書を作成し、相続人全員に署名・押印してもらい、税務署に印鑑登録証明書と一緒に提出する必要があります。
仮に、10か月以内に遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分で遺産を分けたと仮定して、相続税申告を行う必要があります。
また、相続税がかからない場合でも、遺産に不動産がある場合は、法改正があり、相続登記が義務化されましたので注意が必要です。
原則3年以内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料というペナルティを課せられる可能性があります。
このように、遺産分割においては、相続税の申告期限や相続登記の期限も考慮し、できる限り早めに行う必要がありますので、注意が必要です。
遺産分割について相談すべき専門家
1 弁護士
弁護士は法律の専門家ですので、遺産分割について法的な問題が生じた場合には弁護士に相談すべきです。
遺産分割においては、相続人の調査や相続財産の調査を進める必要があり、このような手続きにおいても法的な問題が生じることや、専門的な知識が必要になることがあります。
相続財産に対する寄与や、被相続人からの特別受益があれば、相続人が遺産分割において相続する分が調整されるのですが、どのような場合にこれらが認められるのかや、認められた場合にはどのような効果が発生するのかについて等、法的な観点からの検討が必要です。
また、不動産がどのように評価されるのかや、どのように分割していくのがよいのかについても、簡単に決められるものではありません。
このような問題を解決するためには、弁護士に相談することが必要になるでしょう。
相続について揉めているケースやすでに調停や訴訟などの裁判になっているケースについては、弁護士に相談されるのがよいでしょうし、代理人としての活動を依頼される場合には弁護士にしか依頼することができません。
このように、遺産分割で揉めたら弁護士に依頼するというイメージがありますが、そもそも遺産分割で揉めないように、揉める前から遺産分割の進め方についての相談をしておくという考え方も大事です。
2 税理士
遺産分割においては、相続税についても考慮する必要があり、これを踏まえて協議を進めていく必要がありますので、そもそも相続税がかからないことが明らかである場合を除いて、遺産分割においても税金の専門家である税理士に相談する必要があります。
そもそも相続税の申告の必要があるのかどうかを確認したうえで、申告が必要になるのであれば、相続人は、相続開始を知ってから10か月以内に申告と納付をしなければなりません。
この申告と納付の期限を意識することも重要なのですが、遺産分割の内容が相続税の税額に影響することもあります。
たとえば、配偶者控除や小規模宅地等の特例を利用するかしないかで、全体の相続税額が大きく異なることがあります。
小規模宅地等の特例などは、これを適用するための条件もありますし、実は特例を適用できないにも関わらず適用できると考えて遺産分割をしてしまったり、遺産分割を進めてしまった結果、特例が適用できなくなってしまったりするおそれもあります。
そのため、遺産分割を進めるまでに、予め税理士に相続税について相談しておくのがよいでしょう。